質問
留学先で知り合ったアメリカ人の夫とアメリカで暮らしています。彼は1年半前、IT企業からレイオフされ、それ以来、フリーのプログラマーとして家で働いています。私はフルタイムでテスターとして働いています。不景気のため、彼の仕事は少なく、家事はほとんど彼がやってくれています。もともと彼は独立したいと言っていたし、私も彼に頑張ってほしかったので、始めは問題はありませんでしたが、最近、職場で妊娠ラッシュになり、私の気持ちが変わってきました。今すぐに子どもが欲しいというわけはありませんが、この状態に不安を感じ始めたのです。その話を彼にすると、「今の状態で子どもは無理」と言うだけで、フルタイムの仕事を探すわけでもなく、仕事を増やす努力もしません。彼は今の生活に満足しているようですが、私はとてもそんな気持ちにはなれません。どうすれは彼にもっと頑張ってもらえるのでしょうか。
回答
景気の悪い状態が続くとともに、国際結婚をしている日本人の女性の中にも、あなたのように夫を支えている人が増えています。現代の日本女性には「頑張る女性」が多く、学歴もあり、キャリアもあり、経済力もあります。それに対して、男性の中には社会で「肩身が狭い思い」をすると、草食系になってしまう人が多く見られます。あなたの夫も、プログラマーとしては優秀であっても、自営業として成功させるまでの野心や、押しの強さや、自分をアピールする力などはいまひとつ足りないようです。こういう夫の姿に、妻が「もっと自分が頑張らなければならない」と、もっと働き、疲れ果ててしまう、というケースもありますが、そうなってしまってはいけません。
ここでよく考えてもらいたいのは、あなたたちの結婚のあり方です。以前は、「夫は外で働き、妻は家を守る」というものでした。80年代以降は「夫婦共働き」が増え、現代は「育メン」や「どちらもが子連れでの再婚」も増えています。
現代は、変化が大きく、男女の役割も立場も昔とは違ってきています。従って、結婚の形も多様化しているのです。一般的な結婚、絵に書いたような結婚、というものを追ったとしても、それが必ずしも誰にでも幸せをもたらす、というわけではありません。あなた自身、子どもを「今」持つことにちゅうちょしているのは、そのいい例です。
その点、「自分たちの幸せの形はこれ」とちゃんと分かっている夫婦は幸せです。他人がどうであろうと、何を言われようと、「これでいいんだ」と思えるからです。そこに到達するためには、まず、「お互いが何を求めているのか」、次に「二人は何を求めていくのか」、最後に「そのためにお互いが何をしなければならないのか」の話し合いが必要です。
自分に素直になり、以下のことについて考えてください。あなたの考えがまとまったら、夫と話し合ってみてください。
1)自分のキャリアについてどう思うか
2)夫の自営業についてどう思うか
3)今のストレスや素直な感情はどうか
4)子どもを作るのはどうか
5)二人の将来はどうあってほしいか
これらについての話し合いをする際、始めは言い合いやけんかになることは覚悟してください。というのは、こういった真剣な話がまともにできる夫婦は意外に少ないからです。多くの夫婦が話し合うことなく、「こんなもんだろう」という推定のもとに生活しています。配偶者と見解のずれが生じたり、自分が望まない状態になっても、話し合うとけんかになるので、そのまま我慢して現状維持を続けるか、関係が悪くなっていくか、という人達が多いのです。
「二人で幸せになろう」という基本のスタンスを崩さずに話し合いを進めてください。彼自身が「確かに、僕もそうなりたい」と感じたら、彼は自分から動くようになります。それが肝心なのです。今の彼は、おそらく彼自身もこの先どうすればいいのか、明確には分かっていないようです。二人ともが、「そうだね、こうやって行こう」と心から思えると、二人ともが楽に動けるようになります。そうなるとあなたの気持ちももっと軽くなるでしょう。二人で力を合わせれば、一人よりももっと大きなことができます。どの結婚にも、大きな軌道修正が必要な局面が何度かやってきます。今は、その時期だということです。
(スペースアルク 2012年6月掲載)