質問
留学後、アメリカの企業で働いて1年が過ぎようとしています。最近、同期で入ったアメリカ人の同僚で、仕事自体はいいかげんなのに、言い訳がうまく口が達者な人が責任のある仕事を任されました。別の同僚は、上司とジョークを言い合うのが上手で、上司に気に入られています。そのせいかは分かりませんが、彼も最近小さな昇格が決まりました。要領のいいアメリカ人の同僚たちは、「比較的簡単で目立つ仕事」と「手間が掛かる地味な仕事」という区別をちゃんとしていて、上手に前者の仕事を取っています。必然的に後者の仕事ばかりが私に回ってきます。私は仕事はきちんとしているし、ミスもないし、納期も守っています。ただ英語でのジョークや世間話はどうしても苦手です。上司にもっと大きな仕事が欲しいと言っても、与えてくれる気はなさそうで、逆に社交的ではない私を避けているようにも見えます。こういう社内の動きを見ていると、すぐにクビということはないと思いますが、このままではどうなるのだろうと不安になります。
回答
70年代、日本に進出した多くのアメリカ企業が経験した間違いがあります。それは、日本の支社を立ち上げる際、言葉や文化がいまいち分からない状態で日本人スタッフをリクルートしたため、「履歴書が立派で英語が堪能」であれば優秀だと思い雇ったところ、実際の仕事になると無能だった、という間違いです。つまり、言葉ができるのは、「仕事ができるように見える」ということです。あなたと、口の達者なアメリカ人やジョークが言えるアメリカ人を比べると、上司からすると彼らの方が仕事ができるように見えるのです。しかし、言葉だけでは仕事は成立しません。
言葉にハンディがあっても、能力があることをどうやって認めてもらうかというと、「始めからアメリカ人と同じ土俵で相撲を取るのではなく、まず自分が勝てる土俵で相撲を取る」ということです。彼らは始めから簡単でおいしい仕事が取れるのでしょうが、あなたにはそんなチャンスはすぐには来ません。アメリカ人が嫌がる、「手間が掛かる地味な仕事」を、どんどんすることです。しかも、嫌々するのではなく、誠心誠意するのです。あなたに顧客がいるのなら、彼らを喜ばせ、感動させるくらいの仕事をしましょう。
これは、手間の掛かる地味な仕事だけが自分の仕事なんだと妥協しろと言っているのではありません。そういう仕事もしつつ、「大きな仕事が来たときのための準備」もしておくのです。それは今後会社がやろうとしていることを理解しておくことや、会社が抱えている問題を解決する方法を考えておく、新しい技術を勉強する、などです。
そんなあなたの仕事ぶりは、必ず上司の知るところとなり、今まで任せてもらえなかった仕事が来る、アメリカ人の同僚が手に負えない仕事が来る、そういうときが必ず来ます。それがチャンスです。そこでいい仕事をすることが第一。第二に、あなたの上司は、そこまできて初めてあなたの言うことに耳を傾ける気になったわけですから、それをフル活用して、上司にあなたの仕事への意見やアイデアを言うようにしましょう。上司が「ふうん、この日本人、結構できるじゃないか」と思ってくれたら、やっとあなたは「アメリカ人と同じ土俵に上がった」ことになるのです。ここからが本当の勝負です。
いい仕事は、次のいい仕事を呼んでくれます。一つずつ、あなたがいい仕事をすることで、上司、または会社は、もっとあなたに大きな仕事を持ってくるだろうし、あなたの自信も高まります。そうすると、新しい機会が巡ってくるのです。
アメリカで成功する人は、「型にはまらない」考え方ができて、「従来とは違う早く効率のいいやり方」を思い付き、それを実行できる人です。学校で学んだことや、就職先の今までのやり方をそのまま続けるのではなく、常に新しい情報にアンテナを張って「こうすればもっといいのでは」と考える習慣を付けましょう。
まとめ:
- アメリカでは、自分が「始めから信用される立場にはいないこと」を認識する
- 他の人が嫌がることを率先して立派にやる
- チャンスが来たときのための準備をしておく
- チャンスが来たらそれをつかみ、自己主張をする?
- 常に「より良いやり方」を模索し続ける
(スペースアルク 2013年5月掲載)