質問
6年間アメリカに留学している20代前半の女性です。小さい頃からおとなしくてシャイで人とかかわるのが苦手な性格ということもあり、アメリカでいまだに仲のいい友達ができません。クラスメートは、出会ったばかりの頃は私にとてもやさしく接してくれたのですが、しばらく一緒に過ごすうちに私が無口であまり話さないので会話が弾まなかったり、廊下ですれ違っても愛想が悪く避けているように見えたりするらしく、最近では彼らから嫌煙されています。アメリカ人は社交術に長けている人が多いように感じるので、こういった態度を取っている自分は、本当は不器用なだけだと理解されず、ただ単に性格が悪い人、冷たくてひねくれている人みたいに思われていそうです。本当はみんなのことが好きだしもっと仲良くなりたいけれど、どうやって距離を縮めたらいいのか私にはとても難しくて分かりません。教室でもわざわざ遠くに座っている知り合いに話しかけに行くのが恥ずかしいというか、変な感じに思ってしまいできません。どんどん人間関係が希薄になっていきます。人と話すときにとても緊張するし、ぎこちないし、最近自分は社会不安障害なのではないかと考えることもあります。こんな性格では将来仕事先で支障が出ると感じ、本当に落ち込んでいます。でも自分ではどうやったら直せるのか分からないのです。どうすればこんな状態の自分から抜け出せますか?
回答
仲のいい友達作りに悩む人は意外と多いものです。ですが、あなたの場合、もともと人とかかわるのが苦手で、6年間も友達がいなくてもなんとかなってきたし、クラスメートに誤解されていても、悲しいとか孤独とか感じ落ち込んでいるようでもありません。自分は社会不安障害ではないか、こんな性格では将来仕事先で支障がでるのではと心配されている点を見ると、あなたが求めるものは、社会に出て困らないだけの社交性を身に付けたいということではないかと思います。世間一般では、仲のいい友達を持つことは重要なことで、人生がより楽しく豊かになり、素晴らしいことだとされています。ただあなたの場合は、これまでは勉強が一番のプライオリティーで友人作りはそれほど大切ではなかったのでしょう。それはそれで、決して悪いことではありません。留学がちゃんとうまく行ってきたわけですから。しかし、あなたが懸念するように、仕事をし始めると、人と話すことが苦手、緊張するでは済まされません。また、性格が悪いとか冷たい、ひねくれているというような印象を与えては、職場関係、顧客との関係にも悪影響があります。人と話すとき、そのストレスでめまいなどの症状が出るとか、学校に行けないというようなことではないので、社会不安障害を危惧する必要はないと思います。ただ、これまでの「勉強・留学優先」の生活を少し変えて、「人間関係構築」の努力に時間を割けばいいのです。
まずあなたにとって必要な社交とは何か考えましょう。いきなり仲のいい友達を作るということではなく、相手に不快感を与えない、誤解されない良い人間関係を作ることではないかと思います。あなたは、どんな人となら、仕事や勉強を一緒にすることができますか? まず、信頼でき、責任感があり、きちんと礼儀を守り、話しやすい印象を持った人ではないかと思います。人間関係は、ある意味ギブアンドテイクです。あなたが人に求めるものは、あなたも相手に与えなければ人間関係は築けません。今のところ、あなたにはそれがとても少ないようです。もっとキブを増やすよう心掛けましょう。難しく考える必要はありません、あなたがクラスメートなど他人に望む行動をそのまま行えば良いのです。まず笑顔、そして "Hi, how are you?"を心がけましょう。話すのが苦手なら相手の話を興味を持って聞いてあげましょう。「みんなのことが好きだしもっと仲良くなりたい」と思っているなら、表情やボディランゲージ、言葉で伝えましょう。自分に好意を持ってくれる人に、大抵の人は悪意を持たないものです。最初は難しいと思いますが、家でその状況を想像し会話の練習をするなどして、少しずつ好感を持たれる行動をしましょう。
友達が欲しいのにシャイな人、うまくいかないと悩む人は、他の人は友人関係を作るのが難しくなく、そんなに頑張らなくても人から好かれるものと考えがちです。ですが実際は、多くの人はそれなりに孤独や人間関係の悩みを抱え、他人を理解する努力や人に好かれる努力をしているものです。運動と同じように、不器用なら、なおさら努力をしないと伸びないものなのです。社交術に長けている人が周りにいるのなら、その人の言動を観察しどうしたら好感を持たれるか、スムーズに会話が続くか学ぶのもいいでしょう。本や映画などからも学び、自分にできそうなことから少しずつやっていくのです。もともと不得意だったことですから、最初からすぐにうまくいくことを期待せず、自分から話しかける、グループスタディに参加するなど、とにかく行動に移しましょう。学習、練習、実践、反省を繰り返していけば、徐々に上達していくはずです。変な感じがする、緊張しぎこちないのも初めは仕方ないと割り切り、実際に行動する自分を褒め、ご褒美に一人の時間を思いっきり楽しむなどするのもいいですね。
人と話すとき緊張する、ぎこちなくなるというのは、「上手に話したい。変に思われたくない。よく思われたい」ということの表れだと思います。相手を思いやる気持ちは大切ですが、相手が自分をどう思うかにこだわると、人とかかわりづらくなります。どんな人にも長所短所があり、全ての人に好まれるということはありません。"だめでもともと"くらいの気持ちで勇気を持ち、アプローチしてください。社交でのギブアンドテイクがうまくでき、少しでも会話が弾む相手が見つかれば、人とかかわることの楽しさが分かり、社交の技術を上達させることにもっと喜びが見出せるでしょう。
もともとおとなしくてシャイなあなたが、わざわざアメリカまで留学したのです。失敗を恐れず、そこから学ぶ気持ちで少しずつでも頑張ってください。将来仕事を始めたとき、この経験から得たものがものを言うときが必ずくるはずです。
(スペースアルク 2013年3月掲載)